「小泉米」の「カビ毒検査」は小売のモラルに委ねられる場合も 密かに行われていたルール変更に「ドン・キホーテ」の回答は
「検査が“任意”に」
政府の備蓄米を随意契約で小売業者に払い下げ、「5キロ2000円台以下」で店頭に並べることに成功して脚光を浴びる小泉進次郎農水相(44)。だが、その陰で、実は備蓄米に関する重大なルール変更が行われていた。もしかしたら、私たち消費者は知らぬ間に「カビ毒」を口にしてしまうかもしれないのだ。実際、備蓄米の販売を始めたドン・キホーテの運営会社に「週刊新潮」が取材すると、驚きの実態が明らかになった。
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テレビのワイドショーやSNSでは、小泉農水相が払い下げを決めた備蓄米、通称「小泉米」の話題で持ち切りとなっていて、スピーディーな施策を展開した小泉氏は一部で「英雄扱い」されている。だが、光あれば陰あり。その「速さ」の裏で、ひそかに「ルール」が変更されていたことはこれまで全く報じられていない。しかも、それはコメの安全面を巡るものだというのだ。
コメの大手卸関係者が明かす。
「備蓄米を出荷する際にはカビ毒が発生していないかを調べるため、農水省が、約1センチ四方の網目の金属製メッシュに全量を通して検査する、という決まりがあります。備蓄米はいかにいい環境で保存しても結露やカビが発生する可能性がある。だからカビの塊がないかどうかをメッシュの網で確認するわけです。しかしその検査がいつの間にか“任意”になっているのです」
「回答を控えさせていただきます」
実際、農水省のHPには、
〈 メッシュチェックを行わずに引き渡すことも可能〉
と、確かに書かれている。
「メッシュチェックなしで引き渡された場合、カビ毒検査をするかどうかが備蓄米を販売する小売業者のモラルに委ねられているのです。大手卸は小売業者から精米の依頼が来ると、全量検査を推奨しています。しかし今回の小泉米は中小規模の小売との契約もあり、そうしたところがカビ毒検査をどう考えているのかは分かりません」(前出の大手卸関係者)
6月1日、小泉農水相は備蓄米の販売を始めた「MEGAドン・キホーテ大森山王店」を視察した。そのドンキの運営会社に、カビ毒検査を行った上で備蓄米を販売しているのか問うたところ、
「お問い合わせいただいた内容につきましては、回答を控えさせていただきます」
との回答があった。
「筋書きがあるのではないか」
さらに、前出の大手卸関係者はこう語る。
「小泉さんがドン・キホーテさんに視察に行く直前という絶妙なタイミングでドン・キホーテさんの運営会社から小泉さんに対して『意見書』が出されたのは偶然なのでしょうか。そこには小泉さんの主張に沿うような内容が書かれており、筋書きがあるのではないか、と疑ってしまいます」
その「意見書」ではコメの流通の問題点について、
〈五次問屋なども存在する多重構造によって、中間コストに加え、マージンがそれぞれに発生することが、最終的な小売りの仕入原価に反映されることになる〉
と指摘している。
“五次問屋”などと聞くと、やはり「コメの流通は複雑怪奇」(小泉農水相)なのかと思わされてしまうが、コメ問題に詳しい宇都宮大学農学部助教の小川真如氏は、
「“五次問屋なども存在する多重構造”というのは、一般的な話ではないと思います。等級が低いコメや古米をかき集めようと思えば、間にいろいろな業者が入ってくるのは当然です」
6月12日発売の「週刊新潮」では、小泉農水相によって、コメ価格高騰を招く“抵抗勢力”に仕立て上げられた卸業者側の反論などを含め、複数の専門家の見解を交えながら「コメ問題」について4ページにわたって特集する。
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